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死体臓器移植の抱える問題点、その将来性について書きたいと思います。
1.    臓器移植とは
2.    日本での臓器移植の歴史
3.    死体移植の問題点
4.    臓器移植についての意見
5.    書く中で見えたこれからの課題
臓器移植とは
社団法人日本臓器移植ネットワークのホームページによれば、
臓器移植とは、重い病気や事故などにより臓器の機能が低下し、移植でしか治療できない方と死後に臓器を提供してもいいという方を結ぶ医療です。
第三者の善意による臓器の提供がなければ成り立たない医療です。
と紹介されています。
またその分類として、
提供してくれる相手による分類
・自家移植・・・自分から自分に
・他家移植・・・他の人から自分
提供者の状態による分類
・生体移植・・・生きている人から
・死体移植(脳死移植・心臓死移植)
があります。
日本での臓器移植の歴史
日本での臓器移植の歴史は、1956年に新潟大学で急性腎不全の患者に一時的に腎臓を移植したのを最初に始まりました。64年には本格的に永久生着を目指した腎臓移植が行われ、同じ年に肝臓移植、68年には札幌医大で日本初、世界で30例目の心臓移植が行われましたが、これは和田心臓移植事件として移植患者の死後に騒がれることになりました。
この事件によって移植医療に対する不信感が生まれ、また日本での脳死移植に対する嫌悪感から脳死移植はあまり行われることはありませんでした。
脳死移植があまり行われなかったため、日本では心臓停止後でも移植が可能な腎臓移植が行われていましたが、病院、各県の腎臓バンクが中心となって移植を行っている状態では、その医療施設の移植希望者に優先的に提供されたりしていたために、せっかく提供された臓器も適合率が低ければ拒絶反応によって生着する確率が低くなってしまい、提供者の善意を生かすことができていませんでした。そこで1995年適正かつ公平な移植患者の選択、迅速な臓器搬送を目指して、日本臓器移植ネットワークが設立されました。そして1997年10月、臓器の移植に関する法律が施行され、
・本人の脳死判定に従い臓器を提供する意思の書面による表示
・家族が脳死判定並びに臓器提供に同意する
という二つの要件を満たすことで、法的に脳死が人の死と認められ、脳死移植が可能になりました。
しかしながらこの法律では、民法上の遺言可能年齢との兼ね合いにより、厚生労働省が通知で本人が臓器移植の意思を表示するには15歳以上であることを要件としていたために、15歳未満の人からの臓器提供はできませんでした
この法律は本来3年ごとに見直すとされていましたが、10年間にわたり放置されていました。
12年を経過した2009年、ついにこの法律は一部改正され、
・本人の意思が不明な場合、死後の家族による同意のみでの移植
・家族、親族への優先的な臓器提供意思の表示
が七月の施行を待ってできるようになりました。
この二番目、・死後の家族による同意による移植が可能になったことで、15歳未満の人からの脳死臓器移植が可能になります。
死体移植の問題点
今回は臓器移植の中でも死体移植の問題点について考えたいと思います。
死体移植の問題点としては3つ
・人の死を待つ
・どちらの命を優先する
・リソースの配分
があります。ここからは、これらについて一つ一つ書いていきたいと思います。
 
人の死を待つ
死体移植においては自分とタイプの合致する臓器提供者(ドナー)が、現れなければ移植を受けることができません。臓器提供者が現れたということは、その人が死んだということです。提供者が現れるのを願うことは、提供者が死ぬことを祈るのと表裏一体とだと思います。どんな美辞麗句で飾ってもこの現実は動かしようのないことだと思います。
 
どちらの命を重視するのか
臓器提供の意思を表明している人に対して、万全の治療を行うことができるかという問題です。
 脳死に近い患者を救う治療法として脳低体温療法というものがあります。
難しいことは省略させていただきますが、脳と体の温度を下げることで、脳に発生する障害などを防ぎ、脳死から患者を救う治療法です。それならいっぱいやればいいと思われるかもしれませんが、この治療法は、脳死から人を救う半面、体への悪影響も大きなものがあります。ふつう人間は体が冷えると自身の持つ平熱、通常の状態を保とうとする力、恒常性ホメオスタシスによって筋肉が収縮を繰り返して震えて熱を出し元に戻そうとします。しかしこの治療法では、無理やり体温を下げ続けるので、体の震えなどをそのままにしていては、弱って死んでしまうので、体が震えないように筋弛緩剤を投与するなど、薬を多用することになります。そのため体に大きな負荷がかかってしまうのです。ドナー登録していない人が患者であれば多少体に負荷がかかっても、命が助かればよかったで、済みますし、亡くなってしまったとしても治療しなかった場合と同じことです。
 しかし脳に障害を受けて運ばれてき患者が、ドナー登録者、臓器提供の意思を持った人であった場合、体に負荷をかけることになるこの治療法を行ってしまっては、臓器にダメージが残り移植できなくなってしまう可能性があります。そんなとき、低体温療法をおこなってくれるのか、大きな疑問です。特に本人の同意なしに脳死後の臓器提供を可能にする法改正の施行が7月に迫っています。その法律が施行されたら脳死した患者は即ドナーの候補となります。そんな場合に脳死寸前の患者を救うために全力を尽くせるでしょうか。自分が事故にあったときに、運び込まれた病院、担当する医者によって患者の運命が大きく変わることになります。
 これは善意、人類愛といった言葉で片付けられる問題ではなく、臓器提供者になりうる患者と臓器移植を待つ患者、どちらの命をより優先するかという問題です。
 
・リソースの配分
上にあげたような問題を抱えた死体臓器移植治療の進展にリソースを割く必要があるのかという問題です。
確かに死体臓器移植なくして完治することのできない患者さんが大量にいることは明らかです。しかし、現在人工臓器の開発が進んでいます。いずれは完全に通常の臓器を代替することを目指したものです。そうなれば上記のような問題は解消されます。
確かに今現在人工臓器はそのレベルにまで達していません。だから死体臓器移植を実施すべきだという理論は、納得のできるものです。ですが過渡期的治療法にとどまる死体臓器移植を発展させるためにリソースを投入していては、人工臓器の開発が遅れることになるのではないでしょうか。独立行政法人科学技術振興機構の未来技術年表において2032年には完全埋込型人工心肺が実現すると予想されています。このとき死体臓器移植は不必要です。
あとわずか22年、多く見積もっても30年50年程度で寿命の尽きる治療法に人、金銭などのリソースを割く必要があるのでしょうか。
臓器移植についての意見
自分の言いたいことのほとんどを「リソースの配分」で書いてしまいましたが、死体臓器移植に新たなリソースを割き振興に力を入れていく必要があるのか大いに疑問です。現在持てる力は、全力で患者に当てていく必要があると思いますが、これからのためのリソースを投入して発展させていっても、先が見えています。
将来の人工臓器につながる部分にリソースを投入し、また死体移植に関する技術の中でも、人工臓器につながる部分に対して優先的に資源を使うべきだと思います。
書く中で見えたこれからの課題
2008年5月の国際移植学会において臓器移植と移植ツーリズムに関するイスタンブール宣言が採択され、海外渡航移植の原則自粛が提言されました。そのために国内では、移植を受けられず海外に出るしかなかった15歳未満の人々、その関係者らの陳情により臓器の移植に関する法律が改正されました。人の命、生死の境目を分ける法律が、人の命を助けるためにという美名のもとに通過しました。脳死判定は十分な正確性を持つ者として説明されていますが、親族が判定を拒否し治療を続けたら蘇生した事例もあるそうです。
心臓の停止は、脈を測れば明らかなことであり特別の技術は必要ありません。しかし脳死の判定は脳波測定などの最新の技術を必要としています。脳死判定の登場によって生と死の境目の設定に人類の力が介在することになりました。
ここで脳死は人の死の基準としては不自然なものであると主張することは簡単ですが、その主張は、将来現れると予想される人工臓器によって心肺を補完、置換された人の定義を難しくします。
脳死が人の死となる流れは、科学の進歩が続く限り留めることはできないでしょうが、人の最後、臨終のときにあって判断を間違えることはあってはならないことです。この点に関して、安易な感情論に流されることなく、より一層の議論が必要だと私は、思います。
 
参考文献
移植 脳低温療法 和田心臓移植事件 臓器の移植に関する法律 人工臓器
これが脳低温療法だ/脳死を防ぐ新技術
脳低温療法の明と暗
JSTバーチャル科学館 未来技術年表
科学技術政策研究所 平成11年度~12年度科学技術振興調整費調査研究報告書第7回技術予測調査
社団法人日本臓器移植ネットワーク
 

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